ビフィダス牧場

サークルyogurt、ビフィダスの活動報告場です

僕はマンガを殆ど読まない人間だが好きな漫画は何度も何度も読んで『鉄鍋のジャンR』とかは年単位で同じ本を便所に持ち込んで延々と読んでいた。痔になるまで読む。
で、最近のマンガで、便所に持ち込んで延々と読んでいた作品はこれだ。
紹介したいので紹介します。

掲載紙であったジャンプGIGAが終わったついでに終わったので、一巻で完結している。
一巻で完結しているマンガというと人はしばしば「打ち切られた」「継続できなかったのはにんきがないからで、にんきがないのはおもしろくないからで、だからわるいのだ」などと推測して無意識に見下すのだが、『バオー来訪者』だって『機動戦士ガンダム』だって打ち切りだし『惑星をつぐ者』とかクッソ面白いから読んでね!
で、この作品。クッソ面白い。
試し読みもある。スイッと読めて濃厚でチョー面白い。
http://plus.shonenjump.com/rensai_detail.html?item_cd=SHSA_JP02PLUS00005864_57
ぎなた式。こういう話だ。
主人公は月嵩(ツキタカ)クンという蒼穹紅蓮隊のボスみたいな名前の高校生で、スポーツセンス万能で何でもすぐ上手くなるのにあんま執着をもてずにすぐ辞めてしまう、ある種の空虚を抱えたヤンキーだ。(「まんべんなくデキる奴がまんべんなくハマれない」というのはありそうな話だ。)そいつが、國田さん(ヒロインだ)とか西條(流川だ)とかと出会い、ナギナタという競技に出会う話、なのだが、
その主人公、第一話にてナギナタを見よう見真似でやってヒロインにあしらわれた折に、西條に「お前はナギナタに向いていない」と言われる。
スポーツ万能の主人公が「向いていない」と言われることが、主人公にとって一つの心の引っかかりになる。
これ、すごい面白いと思う。
僕らはアホなので「当人の向いていることに若いうちから努力を集中することで、効率よく社会で認められて成功を得て人生の勝利者になる」というビジョンを理想だとかクレバーだとか思っている。少年漫画でも、「周囲からダメだと思われてる主人公が一つの適性を見出されることで爆発的な力を得て活躍する」的なモチーフはわりと分かり易いし燃えそうだ。
それに対し、この話は主人公が「自分に向いていない」ことを、やる、のだ。
なんか凄く面白い、特有の精神性を感じるでしょう。
そして実際その期待は裏切られない。二話も三話も最終話である四話も、クッソ面白い。
主人公がいい。精神的タフネスと明るさがある主人公は大好きだ。明るいけど道化じゃないのがいい。
ヒロインがいい。ほんわかしているのに根幹のシリアスさと独特の影があるの、1話を試し読みされた皆様にはおわかりであろう。ほんわかしているけど道化じゃないのがいい。
西條がいい。メガネだが、こいつもまたメガネの裏に悲しい影がある。メガネだけど道化じゃない。
みんな真面目に、人生にぶつかり、人生を背負いながら生きている。わしゃ涙が出る。
絵はすごい上手い。
が、絵の上手さより何より、まず描写がクッソ丁寧だ。ものすごく丁寧なマンガというのは一コマ一コマに読み流せない面白みが出てきて多読に耐える。読み返しに耐えるというのはこの時代には軽視されがちだが実際は最高級の特性だと思う。本が宝になる瞬間はそれだからだ。
本を読み終えると、なんか美味しいハンバーガーを食べた時のような満足感と多幸感に包まれる。

年末に出た本だけど、本屋さんの書棚にはまだギリギリあると信じたい。単巻作品の厄介なところは本屋で目立たないということと本屋からすぐ消えるということだが、まだギリギリあると思うから明日とか帰りがけに本屋さん立ち寄って探してみてほしい。ジャンプコミックスの棚のどっかにある。

早くジャンプ本誌とかに移籍して続きを描いてほしいという想いがあるが、一方、「週刊連載だと毎話19ページごとに見せ場を用意しなきゃいけないから話の組み立て方が月刊と全然違うんだろうなあ、週刊連載と月刊連載って、物語を組み立てる方法論が全然違うんだろうなあ」とか余計な推測をしてしまう。
 

札幌国際まんがフェスのレポートの続きです。
札幌には文教堂というシステムが整備されていて、ちょろっと歩くと文教堂で本を購入することが出来る。便利なのだ。
で、買って読んだ本。
・林修先生の本は面白い

ポップに「本当に受験は必要か?」と書いてあったのを見た時、「逆だろう、受験不要論じゃないんだから」とちょっと思った。
実際は「受験ってのは、10代の一時期を、一つの目標に向けて努力し、それを形に残せる贅沢なシステムで、嫌々惰性でやるくらいならしっかりやった方が後々人生にとっていい経験になる」という、受験とか学生とか勉強とかの意味を問い直す本だ。
で、林先生の著作はスタンスがすごくはっきりしていて、読んでて気分が良くなる。
何がいいのかというと、
林先生は「責任の取れないことは言わない」ことを徹底していて、
即ち「扇動者にならない」ということを徹底している。
よく学者とかインテリ層とかはテレビとか新書とかで口を開かせた途端に、市民を先導しよう的なオーラをぷんぷん放って嫌なものなのだが、これが無いのですごくサワヤカなのだ。
振り返るに、予備校というのは勉強をやりたい奴がやる為の場所だし、勉強ってのは出来る奴は自分でガンガンやる。そういう意味で、林先生が相手にする生徒達は基本的に責任能力が高い。そんな中で林先生自身も、生徒との応答の中で自分の責任能力を高めようと努力する。そういう、自己責任で互いを高めあう環境に身をおき続けているところから、こういう「責任を取れないことは言わない」的な態度が涵養されているのではないかな、などと考えてしまう。
巻末に、灘だかの教師との対談が入っているのだが、この灘の教師が割と扇動者っぽい感じなのに対し、林先生が笑顔で自分の引いたラインを守っているのが、読んでて微笑ましかった。
・擬似男女のお話

「店員オススメ」みたいなポップがあって、気になったので買った。気になった本は即決で買えと古事記にある。
インスタントなフェチズム系の話だったら風呂釜にくべてやるとか思ったが(過去に私が表紙買いでぶち当たった本は全部こういう系統で、それ以来表紙買いアレルギーになってしまっていた)、とんでもない、大変丁寧な本で面白かった。
三十路の独身OLである主人公が、夜の公園で一人下手糞にサッカーの練習に励む美形の少年を保護するところから始まる、二人が互いの欠けたなんかを補い合う話だ。
第一話にある「体温を計る習慣」というのを考えたのは本当凄いと思う。
男の子のリアクションがいい。いちいち、読者の心理をトレースするかのような反応をする。プール回にて主人公が水着着ないでプールサイドに来た時の男の子の顔とリアクションを見た時は読んでて「うひゃあ」ってなった。
前々から、女が年増で男が子供というペアの関係というものに関してはあれこれ考えているのだが、ちょっとさじ加減を間違えるだけで関係が一気に重たいものになるので、このさじ加減をコントロールしている作品ってすごいなあって思う。
あと、この主人公の三十路にはクソメガネの元カレがいて、レギュラーだ。このクソメガネの振る舞いが、いかにも臆病で計画的でオズオズしながらズケズケしていて、まるで自分を見ているようで読みながらゲロ吐いた。このクソメガネもまた現代の男性性の象徴だ。

・売野機子
やがて大丸をウロウロしながら、三省堂でまた本を買った。
ふと本棚に表紙が見えるように陳列されていた少女漫画風の作品を目にし、若干興味を引かれて、気になった本は即決で買えと古事記にあることを思い出して冒険して手に取ったのだ。
「少女マンガ的なトキメキ描写を、後学の為に読んでおこう」と思った訳だ。
クリスマスプレゼントなんていらない (バーズコミックス)
売野 機子
幻冬舎コミックスゲントウシャ
2016-12-24

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表紙を見ると、そんなトキメキがありそうな本に見える。
とんでもない本だった。
一読して、「俺は何て本を買ったんだ」と震えた。
二読したら今度は勝手に涙がボロボロこぼれた。
この本は短編を集めた作品集だ。
「パーフェクトケーキ」。高校生カップルの愛を描く少女マンガ、なのだが、一読して脳天を殴られて、少女マンガとは何なのかということが一気に謎になった。
「リラの消えた森で」。すごいタイトルだ。誰かが死ぬ話でもないのに。これは凄い話だった。3人の女の子が同棲生活をしていて云々という話だが、このような紹介ではこの作品のことを上手く説明できない。だが兎に角すごい好きな話だ。リラがかわいい。
兎に角、この本を読んで、私は泣きながら家に帰り、
「漫画家になりたい」と本当に思った
漫画家というのは、尊い、尊い仕事だ。
なんて尊い仕事だろう。
ちなみに、表紙の女の子の話は、作中にも目次にも無かった。これも、読み終わってから気づいて、驚いた。でもどこかにある。

で、同じ作者の同時期に出た新刊もamazonでポチって買った。

これも凄かった。
本にまた殴られた。
「ゆみのたましい」。読んで、とうとう嗚咽をこらえきれなくなって声を出して泣き喚いた。すごい。読み切りでこれなのだ。
「青間飛行」。これも凄い。メガネデブがすごい。LULUが可愛い。メガネデブがすごい。
何度も何度も読み返して何度も何度も泣いた。
ちなみにこの表紙の女の子も、本編には全く出てこない。

読み切りとは、体内で練成した魔剣を口から引き抜いて読者に打ち下ろすことだ。
僕は定期的にエンジェル倶楽部誌にて読み切り作品を掲載させて頂いているが、読み切りを描かせて頂けるというのは本当尊いことなのだ、と再認識した。
一回一回の機会を、大切にしたい。
漫画家というのは尊い仕事だ。
私は無限に漫画を書き続けていたい、と思った。

オススメです。
ちなみに、作者である売野機子先生の新連載が、ついこないだから始まった。
コミックバーズ 2017年 04 月号 [雑誌]
幻冬舎コミックスゲントウシャ
2017-02-28

「ルポルタージュ」という漫画だ。
これも、凄かった。ラブストーリーということなのだが、悪魔的なものを感じる。

・作品を、薦めたい
札幌で買った漫画の大半は、平積みされていた本で、しかも「このマンガが凄い」的なもので取り上げられていた作品だ。そこで取り上げられたから、本屋さんも薦め易くなったのだろうし、我々も手に取り易くなったのだろう。
一方、そういう意味では何の宣伝文句も飾られてなかった売野機子の作品を私はたまたま表紙買いして、一撃で自分の創作性を変容させられてしまう経験をした。
・・・
売野機子先生の両作品、本当に凄いのだが、厄介なことに両作品とも、紹介することが凄まじく難しい。
内容やあらすじを紹介しても、作品の魅力を全然紹介できた気になれないのだ。
オモシロイトコロを掻い摘んでも多分相手には伝わらない。
そもそもオモシロイトコロが、口で喋れない。
面白い所は話じゃなくて、絵かもしれない。話と絵の組み合わせかもしれない。絵じゃなくてコマかもしれない。コマと絵の絡み合いかもしれない。つまりマンガだ。マンガというのはそういうものなのだ(無論、歌を曲と歌詞に分けられるように、マンガを絵とストーリーに分けることは出来るのだろうし、分けて紹介できるほうが「紹介しやすくて便利」ではあるのだが、それはあくまで便利というだけの話だ。マンガという表現をフルで使った結果、絵とストーリーがぐちゃぐちゃに絡み合って引き剥がせない、というものになることはある)。
電子には若干の試し読みもあるが、試し読みで興味を引かせるような内容の作品ではそもそもない。
SNSにスクショを上げて、4P分のスクショでなんかネタっぽくあげつらえて皆でワイワイできたり4Pでコンパクトに人を感動させられて拡散されるようにも出来ていない。
だが、面白い。
この世にはこういう仕方で存在する作品もあるのだ。
・・・
こういう作品を見ると、私の心は引き裂かれる。
「多くの人にまず知ってもらわなきゃ話にならない、知名度を上げねば買われないのだ、今を生きる為には全話公開するのがクレバーだ。炎上商法してでも商品を拡散すべきであり、マーケティング的にも正解ですよ!」という気持ちはある。
だが、「本を買った人が一番最初にその作品と出会い、その作品世界を分け入っていく、というあり方を大切にしたい」という気持ちが、抗いがたく存在する。自作品にだってそう感じる。
しかも、「手早く知ってもらうことに全く向かないけど、読むとすごい作品」というのが現に存在する。
そういう作品を、私は応援したい。こんな作品があるということを世界に知らしめたい。

ので、私は今後、なんか面白いものやオススメしたいものがあったらこのブログで紹介することにした。
「オススメ」というカテゴリを設けたので、今後はここにちょくちょくと面白かったものを紹介していきます。


エロ描く方のビフィダスのインタビュー記事が、2月末発売『エンジェル倶楽部』4月号巻末に掲載されます。
インタビュー!
s69
なんかアホらしいことや恥ずかしいことをベラベラ喋ってるので、この記事はあんま読まないでね!
……あっ、ここはいいこと話してる!ここは読んでね!プロフィールだ。
s70
6EYES好き。

6EYES "Four Dots"。すげえ好き。セックスの匂いのディスコ 俺のピストル返せ
BLANK IN BLACK
6EYES
インディーズ・メーカー
2008-08-06

あ、あと「エンジェル倶楽部誌が何故描き易いか」みたいな話もしてた!
あ、あと、まあ、うん。豪華ラインナップの漫画本編をよろしくね!






月末発売です!よろしくね!
なお、僕の新作は次号(3月末発売)に、載ります。 
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 単行本『キミを誘う疼き穴』、今日秋葉原に行ったら書店店頭から無くなってたから再発注して!オナシャス!秋葉原の書店で一ヶ月前の本が店頭から消えてるってのは、「返本した」よりは「品切れ起こしてる」可能性が高い、と信じたいことでR-type delta。


 

先日、札幌に旅行した。
何をしていたかというと、雪祭りを一通り見てからずっと本を読んでいた。
一人旅の旅先というのはおセンチになる場所だ。だからそこで出会う本は特別に胸に沁みたりするのだろう。そして、自分の来た道とか進む道とか漫画とはとか、あれこれ考えたので、この機会に振り返っておきます。
そこで買った本、どれも面白いので紹介するよ!

1、平川 哲弘『クローバー』
雪祭り会場を一通り見て、「コブラチームの雪像が無かった」とか落胆してたとき、
ふと頭の中にこの漫画の記憶がよみがえった。
クローバーという、週刊少年チャンピオンで連載していた青春漫画の、17巻から19巻を占める「鳴我編」のことだ。
クローバー。面白い。終盤の広島遠征編がタラタラ長くて読むのをやめてしまったが、長く長く面白い作品で、買い揃えてた。
ケンカ漫画かと思いきやバイクや釣りなどの価値観が混じりこんだ奇妙な牧歌性に溢れていて全エピソードがいちいち面白いんだが、その中でこの「鳴我編」は異彩を放っている。

19巻のラストシーンでの鳴我(ものすごく凶悪で強い奴)とゲンゲン(主人公の友人のケンカが強いバカで、昔ヤンチャしていた頃に鳴我と仲が良かったのだが、色々あって決別して苦い想い出になっていた)とのやりとりが、すごく印象的だったのに思い出せなかったのだ。
気になったら、止まらなくなって来た。
ので、丸善に行って、17,18,19巻をババッと買って、歩きながら読んで、ボロボロと泣いた。
==
少年院から鳴我が戻ってきた。旧知であるゲンゲンを鳴我は尋ねる。
ゲンゲンは過去にヤンチャしていた。ケンカは無敵だったが、もっと強い鳴我の噂をききつけ、タイマン挑んでボコボコにされる。しかしゲンゲンは毎週鳴我にリターンマッチを申し込む。やがて孤独な二人は奇妙な友情で結ばれる(泣く)。
しかし、暴力には暴力がつきまとう。ゲンゲンは周囲の何とないノリに載せられて担ぎ上げられ、周囲の恨みを買い、とある高校生に道具で頭をかち割られる。ゲンゲンに跨って暴力を加え続けるその高校生の頭に角材をフルスイングしたのは鳴我だった。
鳴我は捕まる。ゲンゲンは、重傷を負わせた相手の親に平謝りする自分の母親を見て、自分の生き方を後悔する。その悔悟を、病院のベンチの隣に座る鳴我に口にしたその時、鳴我は警察に引き渡されたのだ。そのとき交わされた視線が、ゲンゲンにとっては一つの心の楔になっていた。
ゲンゲンは過去の清算の為に、鳴我と行動を共にする。そして、その過程で自分の友人である主人公ハヤトや、友人達を次々ケンカで倒し、そこらじゅうに喧嘩を売りまくる存在となる。ハヤトや友人達は、ボコられていながらもゲンゲンのことが心配で仕方がない。そして、雨の降る空き地で、鳴我と戦うのだ。
鳴我の心に泣く。俺は鳴我のことを思うと速攻でボロボロ泣く。
最後の鳴我の独白のシーンは、愛の文学のように美しい。まあ漫画は文学だし不良漫画は漫画の中でも特に文学的なジャンルなので、兎に角美しい。
不良漫画というのは、結局は心と心の話なのだ。そういう意味ではエロ漫画と同じだ。不良漫画にはその過程にケンカがあり、エロ漫画ではセックスがある。
僕(ビフィダスF)はエロ漫画を描いているが、その精神的源流にはこの作品があったのだ、と思った。私は思いがけず札幌の地にて心の故郷に帰還した。

・漫画は今読むしかない

一方、歩きながら思った。
クローバーは一時期、「イージスさん」という人物(バナナマンの日村にそっくりな人なんだが、めっちゃかっこいい)の存在によって一気に話題になった。
その過程で、作品全体の独特の牧歌性に注目が集まり、作品評価が高まった、とも考えている。ドラマ化もして、有村架純がヒロインやってたんよ。(ドラマ自体は後半陰惨になってきてすげえイヤだったけど。)
その頃が、作画的にもストーリー的にも最高潮の円熟期だったと言える。それが、広島遠征とかが長々続いて、何となくついていけなくなっている間に、最終回を迎えて終わってしまった。
猫は、死期を悟るとひっそりどこかに行って死ぬと聞く。
漫画はどうだろう。
面白い漫画がだんだんつまらなくなってきた時、僕は今まで悲しみを覚えていた。「どんな漫画もつまらなくなるというのならもう愛など要らぬ!」とか思って悲観したり諦めたりして、新しい出会いを避けるまでになっていた。
しかし、作品がつまらなくなって、そのまま忘れて、気づいたら終わっているとしたら、それはむしろ一つの理想の付き合い方なのではないか?
最高に楽しい時間を過ごして、そして苦い別離の記憶を残さないのだから。
作品には旬がある。 旬の時に、その脂の乗り切った作品を味わいつくす。作品のテンションが落ちてきたら忘れる。そして、ふと思い出したらまた買って読み直す。
そういう付き合い方って、悪くないんじゃあないか。
だとしたら、「今面白いと言われている作品」は、「今買って今読むしかない」のではないか?
何故なら、作品は、つまらなくなって、終わったら、一瞬で表舞台から去っていくからだ。平積み台には置かれず、広告に顔を出すこともなく、本棚に背表紙を並べたまま、気づかれずに静かに消えていく。 
だからこの時に決意した。
「本屋で、一瞬でも気になった本があったら、ノータイムで買う」と。 
私は今まで表紙買いで損した記憶しかなくて、表紙買いがトラウマになっていたのだが、これからは躊躇しない、出会いは逃さない。そう決心した。
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ちなみに、その時に買ったクローバー三冊は、札幌の友人にプレゼントした。そしたら目の前でペラペラ流し読みされた挙句に「この作者ってクローズ描いてた人だっけ?」とか聞かれたので「違う」と答えた。クローズもめちゃ好き。キーコとか美藤とか好き。高橋ヒロシはQPも傑作だ。「来るな小鳥!」でボロボロに泣く。

これ、見た目は怖いが、前に丸善で女性が全巻大人買いをしていたのを見た。男性のみならず女性の心を掴むものがあると思う。不良漫画と少女漫画には近親性がある。

2、この漫画がスゴい!女性編1位、2位
先日、ディープバレー先生に薦められて『春の呪い』を買って読んだ。


2巻で終わりというコンパクトさもあって手に取り易かったが、面白かった。最初、webで第二話に最初に触れたので、第二話を第一話だと思い込んでいたら別に第一話があったので面食らった。
主人公、黒髪ロングの夏美ちゃんが良い。あっけらかんとした明るさと、その背後にある暗い影とが、すごく良い。人間はそうだ。悲しみには笑顔が張り付くのだ。可愛い。そして、苦しむ夏美ちゃんが、自分のことでは絶対に泣かないのがいい。この子が泣くタイミングはいくつかある。悲しみを背負いながら、自分のことでは泣かない。泣けないものを背負うその姿に、私はそんけいのこころをいだいた。
この作品が、このマンガがスゴい女性編の2位だという。
そして札幌の文教堂で、1位の作品というのを見かけて、後学だと思って買った。
岩本ナオ『金の国 水の国』。

これを私は宿のサウナのカプセルルームの中で読んだ。
これは一巻で終わっている。一巻で終わって、一位を獲得した作品だ。
異国の砂漠の地を舞台にした、ちょっと御伽噺めいた、丁寧な恋愛話だ。よく出来た御伽噺を読んだ時の様に面白かった。
だが、読み終えて、私はむっつりと考えてしまった。
・巻数が短い作品
私は脳味噌が少年漫画だったので、
マンガというのは「30巻とか50巻とか延々と続いて、もうちょっとだけ続くんじゃよとか言われるのがただしいありかた」とか能天気に思い込んでいた。
そして、巻数が短い作品のことをバカにしていた。何故なら、「作品寿命がそこで終わる」ことを意味するからだ。その人物達のその後を僕らは追いかけられない。本が終わっているから。したがって、読みきりとかもバカにしていた。
だが、読みきり作品であれ、短い作品であれ、そこで描かれた人物達の人生はそこからも続く。『春の呪い』の夏美ちゃん達の人生は、2巻が終わってからも続く。『金の国 水の国』の二つの国は、話が終わった後も、様々な人たちの想いと愛を受け取って色んな発展を遂げていくだろう。読者はその余韻を含めて楽しんでいるのだ。
全然悪くないあり方だ、と思った。
というか、そもそも私がエロマンガでやっていることが、それだった。
キミを誘う疼き穴 (エンジェルコミックス)
ビフィダス
エンジェル出版
2017-01-20

読んでね!
いかんせん、読みきりとかそういうのは全然悪くないあり方、なのだろう。
が、
次にこういう考えも浮かんだ。
巻数の短い作品は、『このマンガがすごい○○年』みたいなものに選ばれやすいってことがあるのではないか。
3月のライオンとかハンターハンターとかハイキュー(ハイキューはクッソ面白い。少年漫画で今一番面白いと思ってる)みたいに、長く続いてその都度面白い作品は、逆にこういうランキング企画ではパッとしないだろう。
「○○年に輝いた作品」という謳い文句を作品に冠する営みに、一つの業を感じた。
そして、それを謳い文句にして本を売る、ということの、有限性を感じる。言ってしまえば、こういうランキングで上位に来るというのは漫画作品の評価としては一つの、限られた指標に過ぎないのだ。
が、それでも両作品面白いよ。
そして、こういうランキングには出てこないけど、人の心を掴む作品は、皆の胸にちゃんとあるのだろう。そういう作品を応援するには…なんてことを、考えていた。
・ていねいな作品
 そしてもう一つ。両作品とも、クッソ丁寧だ。
『春の呪い』は、 まだヤングなステップ感がある。
『金の国 水の国』は、恐ろしく丁寧だ。古典的ってくらい丁寧だ。
僕はこの作品を読みながら、『コブラ』のことを考えていた。コブラの単行本での作者コメントで、魔少年BTこと寺沢武一先生がこんなことを言っていた。「SFは古いワインを、新しい樽に詰めるのさ」みたいなことを。 
古いワインが、2017年の一位を取ったのだ。読んでてそう感じた。 
それが何を意味するのかということを、じくじく考えて夜を過ごした。

去る1月28日、秋葉原書泉ブックタワー9階イベントスペースにて開催されました、
『キミを誘う疼き穴』発売記念、エンジェル出版主催、サイン&トーク会「天使のまんだん」第一回、無事終わりました。
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すごく素敵なイベントでした!もう、すごく素敵でした。
参加された皆様、この場をお借りして改めて感謝申し述べます!ありがとうございます!本、楽しんでいただければ幸いです!
そして、場をご用意いただきました書泉ブックタワー様、エンジェル出版編集部の皆様にも御礼申し上げます。ありがとうございます!
エンジェル倶楽部公式ブログでのレポートはこちら!
http://angelweb.jp/blog/?p=13777 
以下、私の方でもレポートをさせて頂きます。備忘がてら、何があったのかを思い出しつつ書いていきます。

1、会場に行ってみよう
会場になる書泉ブックタワーさんは、9階のイベントホールフロアまでエスカレーターが通じていて、9階から先のエスカレーターは関係者立ち入り禁止となっていて稼動していない。
ここを、編集さんに案内されてテクテク上り、10階に立ち入った。そして、パネルとか棚とかお手洗いとかを抜けてウネウネ曲がると、控え室があった。私は感動したのでしゃしんを撮った。
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なんてこった!控え室!
暫くして会場設営が終わったので、降りた。
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整然と並ぶ椅子!椅子の上にはおまけのポストカードと、イベント限定のネーム冊子!新作のネーム(漫画の設計図みたいなラフ段階のもの)を冊子にして下さったのだ。
奥にあるのがレジだ。エンジェル倶楽部の新刊も置いてある。
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壁には、告知用に書いた各話ヒロインの日替わりイラストが!壮観だ!(描いててよかった!)
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演台。奥には今回のじゃんけん大会の為に作ってくださった単行本表紙絵のタペストリー。
ちなみに机の上にあるのはサイン色紙。前に描いたけどとある事情で放っておいたものを、折角なのでイベントの為に持って来たのだ。
2、イベント人数に関して
サイン会というものの形式を私はよく知らない。
自分で参加したサイン会は、書泉グランテで開かれた赤根京さんの写真集のサイン会、あの一つだけだ(一生のおもひでぽろぽろだ。生の赤根さんに目の前で「ビフィダスさんですか!」と驚かれた時の感激を私は忘れないだろう)。
前に見たドラマの「重版出来!」では、皆が自分の単行本を持ってきてて、書店を埋め尽くす行列を作り(あれ何百人いたんだ)、机にいる著者にサインをして貰っていた気がした。
だが、これやると結構しんどかろう。
まず書店は行列管理で売り場をおもいっくそ制限されようし、参加された方に体調不良とかトラブルとかあったときの対処・管理もしんどかろうし、
著者もサイン描きまくってその場で絵まで描くとしたら腕が疲れようし(サイン本に「絵」を描くというのも、ある意味で好意のサービスだ。つまりは、サービスが行き過ぎるようになると、しんどい悪習となって維持できなくなってくる)、
並んでいる人の待ち時間も深刻に長くなりそうだ。一人一分でも50人なら50分。最初の人と最後の人とでは50分の差が出てしまう。厄介だ。
今回のイベントは、今後継続していくつもりのエンジェル出版主催サイン会イベントの第一弾企画で、嚆矢というかそんな奴だ。編集さんはかなり企画を練っていらした様子で、次へと繋げていける持続可能なイベント形態、というのを調整していらした。そのある種の様子見として、このイベント規模へと行き着いたのだという訳なのだ(ろう。僕はその企画決定の場にいた訳ではないから知らないが、以下の理解で大体合ってる筈)。
即ち、人数を限定する。20名の予約制。
そしてサイン本はその場で描くのでなく、予め著者の方に本を送っておいて、イラストを描いてから会場に搬入する。予め描ける分、それなりにご満足頂けるようには描く(それでも粗いし、20冊描くのメチャ疲れた。本の表紙をエイッと開いてのアナログ速筆というのは全ての作家が持ってるスキルじゃあないのだ)。
そして、サイン本を会場内レジでお買い上げして頂く(イベントによっては、予約チケットの時点で本の代金を払う形式もあるようだが、会場内でエンクラ本誌も売っていたのでその兼ね合いでこうなったのだろう)。
人数を制限する分、参加者の方には有意義な時間を過ごして頂けるように頑張る。
そして、長く待たされるだとか会場が満杯で体調不良になるとかマイクの声が聞こえないだとかいった風な会場内トラブルが起こらない丁度いい人数。(当然だが、参加された方が一人でも悲しい思いをされてしまうと、「参加者全員が幸せであるように」とイベントを開いている主催側はその方の悲しみを重視してしまい、今後のイベント見直しとか取り止めへと判断を傾けてしまう訳なのだ。だからイベントの管理というのはとっても重要なのだ。
作家負担、イベントの継続可能性、会場規模、イベント管理の限界値、運営体制、これらの兼ね合いの結果が今回のイベントだったのだと思う。
実際、会場に並ぶ椅子を見た時は、「この配置なら最大でも席数は25が限界だろう」と思ったし、イベント開催後は、「本当に良い人数設定だった気がする」と思った。無論、今後また様々な形態を試行していくような気もする。
3、イベント開始
めっちゃ緊張した。
トークの主題に関しては、イベント数日前に編集さんと大雑把に打ち合わせをしていた。
編集さん「当日のイベントトークは、この手元の新作ネーム冊子を見ながら進めるという形にしましょう」
私「あ、その前に、来場者の方にご挨拶とお礼を申し上げる時間を頂戴してもよろしいでしょうか」
編集さん「そうですね、ではその時間を設けましょう」
私「あ、単行本発売イベントなので、単行本に関してお話する時間を頂戴してもいいですか(ズケズケ言う)」
編集さん「そうですね、ではどういった聞き方をしましょうか」
私「えーと、本をまだ読んでない方もいらっしゃるでしょうから、本が出た感慨だとか反応だとか、そういった話がいいでしょうか」
っみたいな感じでズケズケ要求したが、話す内容に関しては当日になって頭がスッカラカンになったのでメチャクチャに喋った。
4、読者にお礼が直接言えるイベント
このサイン会&トークイベントという機会が私にとって嬉しかったのはこれだ。
で、冒頭で確かこういったことを喋っていた気がする。
……
料理人というのは調理中に自分の料理の味見が出来るし、皿に並べた料理を皆と共に味わうことも出来る。
だが、漫画家というのはそれが難しい。原稿を描いていく最中に作品を自分で何度も読んで検討してしまうので、世に出す頃には皆様と同じようには味わえない。自分の作品が本当に人を楽しませているのか、その自信がないのだ。
私がこれまでエンジェルさんで作品を楽しく描けたのは、読者の方からアンケートやファンレターを頂戴していたからで、それがなかったら自信を持てないままウロウロしていたことだろう。本当に助けられた。
読者の方には一人一人にお礼が言いたいし、この度出た単行本を買ってくださった方全員に本当はお礼が言いたいのだが現実的にそれは難しい。でも20名の方にこうして直接に御礼できる機会が出来たこと、大変感謝しているし、その場を提供してくださった書泉様にも御礼申し述べたい。
そして、一つお願いがあるのだが、好きな作家さんだとか好きな作品があるなら、どうかそれを編集さんなり雑誌なり当人なりに伝えて貰えると有難い。そうすると作家は本当元気が出るだろうし助かるだろう。
……

みたいなことを喋った。
会場、最初は私がド緊張状態にあったのだが、段々と参加者の方に笑顔やリアクションが増えて、どんどん打ち解けて温まっていった気がする。
感動したのは、参加者の方に挙手をお願いしたところ、「デビュー以前から同人とかで私を知っていた人」「エンクラで私を知った人」「このイベントや単行本で私に興味を持った人」が綺麗に分かれていたことだった。これは本当嬉しかった。エンクラで掲載したことや、本を出したりイベントをしたことに、明確な意味があったということを、目の前にいる人という形で知ることができたというのはすごいことなのだ。
あとは、何故今作では尻をフィーチャーしているのかとか、尻とおっぱいの差異であるとか、作画についての目標だとか、断面図であるとか、方法論であるとか、編集さんに話を振られるままに、頭を搾り出してムチャクチャに喋った。
と思ったらタイマーが鳴り、じゃんけん大会になり、サイン会になった。
サインを書いて贈呈する時、来場者の方に直接会話してご挨拶することが出来るのだが、この時間もまたとてもありがたかった。ダラダラすべきじゃあないがテキパキし過ぎても良くない、という微妙な場面なのだが、おかげさまでまったりと朗らかに進んで本当良かった。
で、サイン会が終わると、なんと寄せ書きのプレゼントがあった(これ、当日知ったことだ)。参加者の方が私へのメッセージを書いて下さったのだ。有難く受け取った。今でも家で読み返しています。
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花束や、寄せ書きや、お客様や書店様に頂戴したお土産(これもあんま慣習化すると今後に良くない影響を感じるので報告は省かせて頂きます)を持ち帰って、書泉さんを後にした。
本当、ありがとうございました!

5、書泉ブックタワー
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書泉ブックタワーさんは私がかなり長い間利用させていただいた書店の一つで、文庫関係、各種資料や技術書、あとマイナー作品を広くカバーした一般コミック、復刻コミック、あと写真集とかも強い書店さんだ。スケベ漫画もある。
普段、客としてこのお店を利用していた自分が、客と違う立場でこのお店を使うことになる日が来るとは本当思いも寄らなかったことだった。
3年前の自分が今の自分を見たら「何か凄い幸せなことになってるね」と褒めてくれるのだろうか。


単行本、よろしくね!!
スクショ4
 

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