僕はマンガを殆ど読まない人間だが好きな漫画は何度も何度も読んで『鉄鍋のジャンR』とかは年単位で同じ本を便所に持ち込んで延々と読んでいた。痔になるまで読む。
で、最近のマンガで、便所に持ち込んで延々と読んでいた作品はこれだ。
紹介したいので紹介します。

掲載紙であったジャンプGIGAが終わったついでに終わったので、一巻で完結している。
一巻で完結しているマンガというと人はしばしば「打ち切られた」「継続できなかったのはにんきがないからで、にんきがないのはおもしろくないからで、だからわるいのだ」などと推測して無意識に見下すのだが、『バオー来訪者』だって『機動戦士ガンダム』だって打ち切りだし『惑星をつぐ者』とかクッソ面白いから読んでね!
で、この作品。クッソ面白い。
試し読みもある。スイッと読めて濃厚でチョー面白い。
http://plus.shonenjump.com/rensai_detail.html?item_cd=SHSA_JP02PLUS00005864_57
ぎなた式。こういう話だ。
主人公は月嵩(ツキタカ)クンという蒼穹紅蓮隊のボスみたいな名前の高校生で、スポーツセンス万能で何でもすぐ上手くなるのにあんま執着をもてずにすぐ辞めてしまう、ある種の空虚を抱えたヤンキーだ。(「まんべんなくデキる奴がまんべんなくハマれない」というのはありそうな話だ。)そいつが、國田さん(ヒロインだ)とか西條(流川だ)とかと出会い、ナギナタという競技に出会う話、なのだが、
その主人公、第一話にてナギナタを見よう見真似でやってヒロインにあしらわれた折に、西條に「お前はナギナタに向いていない」と言われる。
スポーツ万能の主人公が「向いていない」と言われることが、主人公にとって一つの心の引っかかりになる。
これ、すごい面白いと思う。
僕らはアホなので「当人の向いていることに若いうちから努力を集中することで、効率よく社会で認められて成功を得て人生の勝利者になる」というビジョンを理想だとかクレバーだとか思っている。少年漫画でも、「周囲からダメだと思われてる主人公が一つの適性を見出されることで爆発的な力を得て活躍する」的なモチーフはわりと分かり易いし燃えそうだ。
それに対し、この話は主人公が「自分に向いていない」ことを、やる、のだ。
なんか凄く面白い、特有の精神性を感じるでしょう。
そして実際その期待は裏切られない。二話も三話も最終話である四話も、クッソ面白い。
主人公がいい。精神的タフネスと明るさがある主人公は大好きだ。明るいけど道化じゃないのがいい。
ヒロインがいい。ほんわかしているのに根幹のシリアスさと独特の影があるの、1話を試し読みされた皆様にはおわかりであろう。ほんわかしているけど道化じゃないのがいい。
西條がいい。メガネだが、こいつもまたメガネの裏に悲しい影がある。メガネだけど道化じゃない。
みんな真面目に、人生にぶつかり、人生を背負いながら生きている。わしゃ涙が出る。
絵はすごい上手い。
が、絵の上手さより何より、まず描写がクッソ丁寧だ。ものすごく丁寧なマンガというのは一コマ一コマに読み流せない面白みが出てきて多読に耐える。読み返しに耐えるというのはこの時代には軽視されがちだが実際は最高級の特性だと思う。本が宝になる瞬間はそれだからだ。
本を読み終えると、なんか美味しいハンバーガーを食べた時のような満足感と多幸感に包まれる。

年末に出た本だけど、本屋さんの書棚にはまだギリギリあると信じたい。単巻作品の厄介なところは本屋で目立たないということと本屋からすぐ消えるということだが、まだギリギリあると思うから明日とか帰りがけに本屋さん立ち寄って探してみてほしい。ジャンプコミックスの棚のどっかにある。

早くジャンプ本誌とかに移籍して続きを描いてほしいという想いがあるが、一方、「週刊連載だと毎話19ページごとに見せ場を用意しなきゃいけないから話の組み立て方が月刊と全然違うんだろうなあ、週刊連載と月刊連載って、物語を組み立てる方法論が全然違うんだろうなあ」とか余計な推測をしてしまう。